古田新太
コメント

古田新太

――まずは今回上演する『爆烈忠臣蔵』について、現時点での想いをお聞かせください。

今回劇中劇があって、出てくる人たちのほとんどが二役以上やっているような感覚になって、いちいち「この人は誰が演じるんだっけ?」と思ってしまうんですよ。文字面でなく、実際にそれぞれが演じているのを見ればすぐわかるんですけど。「ああ、そこは夫婦なのね」とか誰と誰が仲間で、とかも登場した時点ではわからないような作りになっていて。かずきさん的には「そこの謎解きもお楽しみください」なんだろうけど。

――基本的には、ストレートでわかりやすい物語ではあるんですが。

いいモノと悪モノもはっきりしているし「こいつのせいでそうなったのか!」というのもわかりやすい。そこは“チャンピオンまつり”だから、単純なんです(笑)。いつもならもう少し時代考証もするんだけど、今回はあまり関係ないというか所詮は『轟天』シリーズみたいな路線だったりするから。(向井)理くんは、どうするつもりなんだろうなぁ、まあ、(小池)栄子や(早乙女)太一は慣れているから諦めて覚悟しているだろうと思うけど(笑)。

――タイトルに『忠臣蔵』がついていることに関しては、最初はどう思われましたか。

「あ~またやるのか、忠臣蔵」と思いました。 オイラは『忠臣蔵ブートレッグ』(戸田山雅司脚本、いのうえひでのり演出、1995年)をやっているし、よそでもやっているから。日本人はみんな好きだよね、『忠臣蔵』が。

――一応、新感線の公演としては『忠臣蔵』をモチーフにするのは今回が初めてですね。

所作とかは、また誰かに指導していただかなきゃいけないかも。ちゃんと教わったほうが、かっこいいし。とはいえ、(橋本)じゅんさんだったら、逆にデタラメでやったほうが面白いとは思うけど。

――今回の座組、ゲストの顔ぶれについてはいかがですか。

栄子、太一、理くん、が揃うんですから楽しそうです、とりあえず新感線に悪意を持ってる人はいないだろうから(笑)。あとは、オイラとかじゅんとか(橋本)さとしとかの勝手な遊びに付き合わされずに済めば、ちゃんとした芝居になるんじゃないかな。これが劇団員だけだと、気持ちが上がらないんです。「おまえがそうするの、もう知ってるよ」って思うから。だからゲストが大勢いてくれたほうがオイラとしてはありがたいんです。ぜひ3人には頑張ってもらいたいですね。

――改めて劇団の45周年記念公演だということについては、どんな思いがありますか。

オイラは結成の4年後に参加したわけなんで40年とちょっと、だけどね。今、劇団に残ってる人で45周年なのはいのうえさんだけだから。その次に古いのは竹田団吾さんで、団吾さんは衣裳だけで出演はもうしていないし、その次に古いのがオイラで、次がじゅんさん、逆木さん、粟根さんの順。

――でも、まさか45年も続くとは。

他の現場ではみんな「45周年!? いつまでやってんの?」って、あきれてるよ(笑)。普通は劇団で同じメンバーでそんなに長くやってたら「もうやることないよ!」ってなりそうなもんだけど。

――だからゲストが来ると嬉しいんですね(笑)。なぜ続いたんだと思いますか?

いのうえさんが、まだやり足りないことがあるからじゃないかな。もしくは、いまだにすべて成功したことがないと思っているのかも(笑)。「明日なろう、次こそはこうなろう」とか思っていそう。いのうえさんには「その“明日なろう”は、まず芝居をもっと短くすることだよ!」ってオイラは何度も口を酸っぱくして言っているんだけど。

――(笑)。でも、そのいのうえさんのやる気が、みんなを引っ張ってくれている、と。

それもあるし、スタッフやアンサンブル、ダンサーとかアクションの子たちとかバンドメンバーが充実していけばいくほど、いのうえさんはやりたいことを新たに思い付くから。「このメンツなら、あれもできるじゃん、これもできるぞ!」って。昔できなかったことがどんどん叶うから、楽しいんでしょう。

――今回の公演で何かこれを成し遂げておきたいなとか。目標とかあったりしますか?

いつもと一緒で、とにかくお客さんに喜ばれる作品を作る、それだけ。「ああ、面白かった!」と言って、帰ってくれたらもうそれでいいんです。それはどの作品に出ても変わらないこと。今回もまた、お客さんがゲラゲラ笑ってくれることを祈って、老体に鞭打ってひたすら頑張りますよ!!

――そして古田さんは今年、還暦になられるので還暦記念公演でもありますね。

そうそう。だけどオイラはそもそも、スペシャルデイ嫌いだから。

――誕生日とか、何周年とか?

結婚記念日とか、記念日が大嫌い。誕生日なんか、毎年来るんだぜ?(笑) オイラの予定ではもう死んでるはずだったんですよ。バカボンのパパの年齢を越えたらもうそこでいいだろう、と。だけど、気づけば計画がどんどん崩れていって(笑)。

――役者も、60歳までやるとは言われてなかった気がします。

全然、思ってなかった。それまでに下北沢でラーメン屋をやってる予定だった。バンドマンや劇団員たちが、全国ツアーに出ても大丈夫なシフトが組めるバイト先にしようって思ってたのに。

――(笑)。でも結局、まだまだ役者は続けていただけそうですね。

でもこの先はライブメインで、あとバラエティとナレーションだけでなんとか食えていけたらいいかな。それで貧乏な後輩たち、ちびっ子たちを安い居酒屋に連れていっておごる、という生活をこれからもやっていこうと思っています(笑)。

今回は芝居バカのお話ですが、あなたは何バカですか?

収集癖があるから、収集バカ。フィギュア、レコード、キャップ、靴……。「これ以上、どこに置くんだよ?」って奥さんと娘に怒られる。でも買っちゃう。少し前から奥さんに「レンタルスペースを借りたからお父さんの普段使わないものはみんなそこに置いています」と言われてるんだけど……場所も教えてもらえてなくて、たぶん捨ててるんじゃないかと思う……。

中島さんといのうえさんに稽古前に言っておきたいこと

どちらも、もうしんどいと思うので、そろそろ長い芝居を書かない。作らない。だいたいわかるでしょ、1ページ何分かかるか、みたいなことは。劇団員たちの高齢化も進んでいるわけだし。きっとあなた方二人の力なら、短くても面白い芝居が作れるはずですよ!(笑)

profile

(ふるた・あらた) 1965年12月3日生まれ 兵庫県出身 劇団☆新感線の看板役者。大阪芸術大学在学中の1984年から劇団☆新感線に参加。エネルギッシュで迫力ある演技には定評がある。劇団公演以外の舞台にも積極的に参加し、自身で企画・出演を務める演劇ユニット“ねずみの三銃士”でも活動。活躍の場は広く、バラエティ番組やCM出演、コラムニストとして書籍も出版している。2024年に第45回松尾芸能賞優秀賞を受賞。現在バラエティ番組「EIGHT-JAM」(EX) 、太陽生命Presents「しあわせ2倍!二拠点生活〜素晴らしきMy Way〜」(BS朝日)にレギュラー出演中。劇団公演以外の近年の主な出演作品に、【舞台】『⼀富⼠茄⼦⽜焦げルギー』(26年1月開幕予定)、『ベイジルタウンの女神』(25)、『パラサイト』(23)、【映画】『ゴリラホール』(25年公開予定)、『栄光のバックホーム』(25年11月公開予定)、『ベートーヴェン捏造』(25年9月公開予定)、『パディントン 消えた黄金郷の秘密』(25・日本語版吹替)、『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』(25)、【ドラマ】『ノンレムの窓 2025・新春』(25・NTV)、『となりのナースエイド』シリーズ(25・24・NTV)などがある。