向井理
コメント

向井 理

――新感線から三度目のお呼びがかかった時は、どんな感想を抱かれましたか。

率直に嬉しかったです。まず新感線という存在が、すごく強烈じゃないですか。そこに初めて参加した時もですけど、二度目の時も、そして今回はその時以上に、また呼んでいただいて嬉しく思いました。しかも45周年という区切りのお祭りですし、出たくても出られない劇団でもありますから、本当に贅沢な話をいただいたなと。とはいえ、自分でいいのかなとも思いましたけど。でもまあ、(中島)かずきさんとかいのうえさんが自分に求めているものがきっと何かあるから、呼んでいただけたんだと信じます(笑)。その求められているものに関して明確な答えは聞いていませんが、前回の『狐晴明九尾狩』(2021年)の時は、話を回すポジションでセリフ量も多くて。

――確かに、説明ゼリフも大変多かったですね。

そういうセリフって、当たり前ですけどただ覚えて言えばいいわけでもないし、単に感情が伝わればいいセリフとも違うし。しっかりと言葉を一つ一つ置いていかないとお客さんに今、どういう状況かわかっていただけないくらいの、複雑な騙し合いのバトルでしたからね。そこは丁寧にセリフを言いたいなと思っていたんです。あれが、たぶんまた呼んでもらえたきっかけなのかもと自分では思います。新感線に初めて出た時(『髑髏城の七人』Season風2017年)は慣れるまでひたすら必死で、周囲を観察する暇もありませんでしたが、前回はちょっと余裕が出て来た気もしましたしね。

――向井さんはコンスタントに演劇にも出られていて、本当にさまざまな小劇場系の演出家の方々と組まれてきましたけど、同じ演出家と三度もご一緒するというのは珍しいのでは。

前回、二度目に出演した時点で初体験でした。でも二度と三度では、もうあまり変わらないかなとも思いますよ(笑)。

――改めて新感線に感じている魅力というと、どういうところですか?

とにかく、この日本でここまで長くやり続けている劇団も少ないですし、これだけ派手なことができるのも新感線だけだと思いますしね(笑)。演劇的な面でも次は一体どう来るんだろうという期待値のハードルが高いはずなのに、ちゃんと毎回いい意味で裏切って驚かせてもくれて。それって簡単なことじゃないと思うし、すごいことですよ。

――『爆烈忠臣蔵』という今回の作品について、台本を読んだ感想などは。

『爆烈忠臣蔵』に限らず、『髑髏城の七人』にしろ『狐晴明九尾狩』にしろ、タイトルからして毎回こだわられていますよね。音の弾け方なのかな、みんな言いやすいし聞き取りやすいんです。かずきさんの書くセリフも、ちょっと韻を踏んでたりして、とてもしゃべりやすい。きっと言葉のチョイスをじっくり考えられているんだろうなと、毎回感じています。今回の台本は、読んでいてちょっと劇団というものの原点っぽい感じがしました。劇中劇というのはよくある手法かもしれませんが、いわゆる俳優とか芝居というものに対して真っ向勝負しているな、とも思いましたし。歌や踊りももちろんありますがその派手さでびっくりさせるのではなく、意外とお芝居の本流も盛り込みつつ、芝居に対してものすごく熱い気持ちを持っている人たちの熱いお話でした。これからの稽古で、いのうえさんから肉付けされたらもっとおバカなところがいっぱい増えていきそうではありますけど(笑)。

――向井さんは『忠臣蔵』という演目自体には、何か思い入れがあったりしますか。

年末や正月にこたつで見る特別な時代劇で、これまで何度もやられてきて、何故か日本人らしさみたいなものを感じさせられる物語なのかなとも思います。でも結局、どっちが善か悪かも置かれている立場と脚色によって変わるので、わかりやすい勧善懲悪というものとも違いますよね。当時は抑圧されている時代だから、暴君に対して一矢報いたというのがスカッとしたのかもしれないですけれども。

――今回、二役やることに関してはいかがですか。

でも、これまでも二役に近い役柄でしたよ、『髑髏城~』だったら蘭兵衛は後半、人が変わったようになるからメイクもセリフ回しも変えましたし、『狐晴明~』の時も普通の利風、ちょっと若い頃の利風、狐が化けている利風、あと狐が半分出てきているのと完全体とでも違ったし。前回は僕、4.5役だと思っていましたから。そう考えると、今回の二役に関しては、前回の半分か~というくらいです(笑)。

――0.5とかの微調整はないので、むしろやりやすいかも(笑)。

二役の演じ分けであれば、きっと極端に変えたほうがいいかもしれませんね、片方はべらんめえ調で、もう片方はクールで、とか。具体的な部分は、稽古で探っていきたいと思います。

今回は芝居バカのお話ですが、あなたは何バカですか?

“晩酌バカ”です。毎日、欠かせません。何でも飲みますが、大概ビール飲んでワイン飲んで焼酎って感じですね。焼酎は、夏は芋のソーダ割り、冬は芋のお湯割り。一年中同じものを飲んでいて、まわりからは「よく飽きないね」って言われています(笑)。つまみは買ってきたりもしますし、砂肝を炒めたりして自分で作ったりもするし。知り合いに酒屋さんが多いんですよ。芋焼酎やウイスキーを作っている方だけでなく、最近は急に日本酒の蔵元さんとお会いする機会が増えたので、日本酒もよく飲んでいます。

中島さんといのうえさんに稽古前に言っておきたいこと

僕はストレスをあまり感じないタイプだし、特に新感線の稽古場で「ああしてほしい」とか思ったことはないんですけど。今回は稽古期間が真夏ですからね。今年もきっと暑くなるでしょうから、休憩多めでお願いしたいです(笑)。僕がどうというより、みなさん高齢化してきていますし(笑)、ちゃんと水分補給しながらやっていきましょう!

profile

(むかい・おさむ) 1982年2月7日生まれ 神奈川出身 2006年にドラマ「百夜行」(TBS)で俳優デビュー。数々の話題作に出演し、ドラマ・映画・CMなどで幅広く活躍するほか、その知性や声色を活かし、ドキュメンタリー番組のナレーションやナビゲーターも多数務めている。近年の主な出演作に、【舞台】『ウーマン・イン・ブラック』(24)、『リムジン』(23)、『ハリー・ポッターと呪いの子』(22-23)、『美しく青く』(19)、【映画】『パリピ孔明 THE MOVIE』(25)、『イチケイのカラス』(23)、『ウェディング・ハイ』(22)、『はるヲうるひと』『バイプレーヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら~』(21)、『モンテッソーリ 子どもの家』(21・声の出演)、【ドラマ】『藤子・F・不二雄 SF短編ドラマ』(25・NHKBS)、『舟を編む〜私、辞書つくります〜』(25・NHK)、『ライオンの隠れ家』(24・TBS)、『ダブルチート 偽りの警官 Season1』(24・TX)などがある。劇団☆新感線には『狐晴明九尾狩』(21)以来、本作が3作目の参加となる。