劇団が45年も続くなんて、奇跡みたいなことだと思うんです。しかも歴代の劇団員の方々が大集合する公演となれば、僕自身だって目撃したい貴重な機会ですからね。その場に、自分も入れていただけるだなんて。すごく、嬉しかったです。
いや、新感線が『忠臣蔵』を、というのはどういうことになるのか全然想像がつかなかったですね。かずきさんからだったかな、まだ台本を書く前の段階で「次回は女形をやってもらってもいい?」とは言われていたので、それが最初の印象だったんですけど。
素直に、「はい」って返しました(笑)。だけど、新感線に何度も出させていただくたびに新鮮な役どころを与えてもらい、さまざまなチャレンジをさせてもらっていて。確か、僕が初めて新感線に出た『蛮幽鬼』(2009年)の時は女性に化けている姿から始まっていたので、ちょっと大きく一周回ってここで原点に戻るような感覚にもなっています。
実は『忠臣蔵』は僕にとって、人生で一番イヤなお芝居なんです。唯一、セリフを2ページくらい飛ばしてしまった思い出があるもので。当時、まだ小学生だったんですが、それ以降、セリフはきっちり覚えようと思うようになりました。『忠臣蔵』をやるのはその時以来になります。そもそも自分のところの劇団公演ではなく、年に何回かあるちびっ子大会みたいな、いろいろな劇団の子役が集まってくる企画の舞台で。いわば同世代のライバルたちと戦うような場所でもあったのに、そこでの大失態だったわけです。
たぶん、あれが役者人生で一番大きな失敗でした。とはいえ、ここで改めて取り組めるということは上書きできそうでありがたいかも。しかも今回は単に『忠臣蔵』をやるのとも違って劇中劇でいろいろな役を演じることもできそうですし、自分だけでなくみんながさまざまな役を演じる姿が見られそうなことも、とても楽しみなんです。
(橋本)じゅんさんとご一緒できるのも久しぶりだし、(橋本)さとしさんとは共演経験はあるけど新感線の舞台では初めてですし。羽野さんとは『髑髏城の七人』Season月(2017年)の時は別のチームだったので、稽古は一緒でしたけど共演はできていなかったし。だから本当にしっかりとした新感線オールメンバーがいる中に、自分も入れるんだなぁと思うとシンプルに嬉しいです。ここまで揃うのは、もうないんじゃないか?って感じですよね。
向井さんとは舞台では初共演なので、未知ですね。以前、ドラマで同じ作品には出ているんですが、まったく絡んでいなくて一度もお会いできてなかったので、顔合わせの日が楽しみです。そして小池さんとはもう、本当に久方ぶり。”ワカドクロ”(『髑髏城の七人』2011年)で、だいぶ迷惑かけてるはずなんです。まだ僕は19歳で、あの頃ほとんど人と喋れなかったんですよ。確か小池さんの隣の楽屋だったんですけど、スピーカーでガンガン音楽を流してて、音漏れしてたと思うんですよね……。だから今回は、改めて謝るところから始めようかと思っています(笑)。
女形では、お芝居をすることってあまりないんですよ。基本は踊りだけで、芝居としてはたまに『弁天小僧』をやるくらい。今回は女形のご指導もしていただけるみたいなので、そういった意味ではまた新たな挑戦ができそうだと思っています。そして劇団☆新感線は、自分が青春時代に観て感動して憧れた場所でもあり、その集団が年月を経てもそのままでいてくれていることが、とにかく自分としては嬉しくて。ある意味、自分がカッコイイとか面白いと思う感覚はだんだん変化するものでもあるけど、新感線には当時の自分が感動したところ、カッコイイと思ったところが色褪せず、好きなまま残されている。そういう場所だからこそ、今度は逆に新たな世代の人たちも憧れる場所になったらいいなと思うんです。比べるのもおこがましいですが自分も、ものづくりをしているとどうしても迷いが生まれたりすることがあって。だけどここではいのうえさんが目指すべきものをしっかり一本貫いてくれているから、誰もブレないんですよね。さまざまな方向性のチャレンジをし続けながらも、劇団☆新感線としては根本的に大事な部分が変わらない。そこがいつも潔くて清々しくて、やっぱりカッコイイな!と思っています。
なんだろう、そもそも、あまりこだわりとかがないんですよね。じゃ、サウナにしておこうかな。5~6年前からハマって、わざわざ有名なところに行くこともあるし、汗をかくこと自体が日課で基本的には毎日行ってるし。“発汗バカ”ってことかも(笑)。家でも毎日朝と夜に風呂に入るし、まず目覚ましに1時間半くらい出たり入ったりして、そこからサウナに行くこともある。夜も仕事が早く終われば大体サウナに行って、お風呂も入る。そのサイクルが当たり前になっちゃいましたね。でも基礎体温が上がるんで、身体を壊しにくいし、肌もきれいになったと思いますよ。
そんなこと、何もないですよ。これまでも、一度も何かリクエストなんか言ったことないと思います。ただただ、言われたことをやるのみです。
(さおとめ・たいち) 1991年9月24日生まれ 福岡県出身 大衆演劇「劇団朱雀」の二代目として4歳で初舞台を踏み、全国で公演を行う。2003年に北野武監督の映画『座頭市』に出演したことで、“100年に1人の天才女形”としてその名を広く知られることとなる。15年の劇団解散以後は、舞台やドラマ、映画出演など活躍の幅を広げている。19年の「劇団朱雀」復活公演より二代目座長として総合プロデュースを手掛け、23年には2年半ぶりに『祭宴』を上演した。近年の主な出演作品に、【舞台】『蜘蛛巣城』(23)、【映画】『まる』『帰ってきた あぶない刑事』(24)、『仕掛人・藤枝梅安』(23)、【ドラマ】『イクサガミ』(25年11月配信予定・Netflix)、『怪物』(25・WOWOW)、『鬼平犯科帳 暗剣白梅香』(25・時代劇専門チャンネル)、『ドンケツ』(25・DMM TV)、『HEART ATTACK』(25・CX)、『六本木クラス』(22・EX)、『カムカムエヴリバディ』(21・NHK)などがある。劇団☆新感線には『天號星』(23)以来、本作が8作目の参加となる。