早乙女太一くんが斬って斬って斬りまくる芝居をやりたいと、以前から細川プロデューサーに訴えていた。そこに友貴くんが加わればいうことはない。新劇場のこけら落とし公演のキャスティングが、古田くんと早乙女兄弟がメインだと聞いて、これは自分の願いが叶ったと勝手に解釈した。
だったら、いつかやろうと思っていた江戸の殺し屋達の物語にしよう。必ず殺すあのシリーズへのオマージュをやろう。しょっちゅうオマージュしてる気もするが、今回は腰をすえてしっかり書こう。だったら、山本千尋さんにも出てもらおう。早乙女兄弟+山本千尋。最速の立ち回りがお見せ出来るぞ。若い人にしっかり動いてもらおう。久保史緒里さんには物語のキーパーソンをお願いしよう。成志くんにはうちのベテラン勢とともにドラマの脇を固めてもらおう。
と、そこまで考えてもう一つ、何か足りないと思った。ドラマの芯がない。
そうだ、古田くんと太一くんの人格が入れ替わるのはどうだろう。
非情な殺し屋の太一くんが、顔はいかついが実は温厚で気弱な殺し屋の元締め古田くんを殺そうとした瞬間に入れ替わる。立場の逆転も含めてさてどうなるか。これなら、二人どちらも強気と弱気、両方の芝居が見せられる。周りとの関係もねじれるしドラマになる。 というわけで、次の新感線新作は、池波正太郎風『君の名は。』という趣向。ご期待下さい。
(なかしま・かずき) 1985年『炎のハイパーステップ』より座付き作家として劇団☆新感線に参加。座長いのうえひでのりとは高校演劇を通して知り合う。『髑髏城の七人』『阿修羅城の瞳』など歴史や神話をモチーフに物語性を重視し、複雑に絡み合う伏線を多用した脚本は、疾走感とグルーヴ感あふれる演出とあいまって劇団の代表作となっている。また、劇団朱雀『桜吹雪八百八町』(23)、『サンソン-ルイ16世の首を刎ねた男-』(21・23)、『No.9 -不滅の旋律-』(15・18・20)、『真田十勇士』(13・15)、『ジャンヌ・ダルク』(10・14)、『戯伝写楽』(09・12・18)など、外部への書き下ろし作品も多数。演劇以外にもコミック原作や、【テレビ(脚本)】『封刃師』(ABC/EX・22)、『ふたがしら』(WOWOW・15)、『仮面ライダーフォーゼ』(EX・11)、【劇場アニメ(脚本)】『プロメア』(19)、『ニンジャバットマン』(18)、『クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』(14)、【テレビアニメ(脚本・シリーズ構成)】『バック・アロウ』(21)、『BNA-ビー・エヌ・エー‐』(20)、『キルラキル』(13)、『天元突破 グレンラガン』(07)を手掛けるなど活躍の場は広い。