名家の長男として、品行方正に暮らす浦島太郎(福士蒼汰)。
世に溢れる批評に辟易した彼は、なるべくそこには近づかず、風流に生きようと努めている。弟妹はそんな彼をつまらないと言うが、風流人はなにごとにもムキにならないのだと、その心がわからぬ人々を憐れみながら生きていた。
そんなある日のこと、助けてもらった恩返しに現れた亀(粟根まこと)から、竜宮城には他人をどうこう言う者はおりません、と聞き、そんな素晴らしい場所があるならばと、おっかなびっくり海の中へ。なにを聞いてもまともに答えず斜め上。されどもっともな亀の言葉に翻弄されつつ、竜宮城にたどり着く。
そこにはドライな態度の乙姫(羽野晶紀)、そしてすべてが無限に許される空間があった。
自称・作家の男(宮野真守)。
俺は見た目もいいし女にもモテるし、だから師匠の太宰からもかわいがられる、と自分で言っちゃう自己肯定感高めの男だ。のらりくらりと生きてきたものの、30代後半を迎えても空っぽな自分に危機感を覚えたか、「自分の小説を書くぞ!」と決心。戦時下の山奥に篭もる。
しかし、美しい少女(井上小百合)と出会った瞬間、殊勝な決心は雲散霧消。俺のことを愛してくれないか? と少女ににじり寄る。だが、潔癖な少女は軽佻浮薄な輩が大嫌い。自分に気があるのをいいことに男を誘い、破滅させようと策略をめぐらす。
いい格好しいなのか、それとも単なるバカか。気づかず少女のいいなりになる男。
そしていつしか男の姿は狸、少女の姿は兎になっていた。