作:中島かずき コメント
8月初め、突然ヴィレッヂの細川会長から電話がかかってきた。来春の新感線公演を、予定していた規模から人数を縮小しての公演に変更したいから、知恵を貸してくれというのだ。条件は出演者10人前後、公演時間2時間以内。当初出演するはずだった古田、阿部、浜中、西野、木野の5人には継続して出演してもらう予定だという。
とにかく時間がない。「木野さんがいるのなら『月影花之丞』がいいんじゃないかな。あれだと劇中劇もあるから、雑多なアイデアもぶちこめるし」と考えて臨んだ打合せで、まずいのうえが「こんな時期だから楽しい芝居がいいな。『花の紅天狗』みたいな」と切り出した。まさにそれを俺も考えてたよと言うと、すかさず細川氏が「それはかずきさんが書くということだよね」。あっという間に月影花之丞第二弾に決まってしまった。しかも自分が書くことに。とりあえずスケジュールをこじ開けて書き始めると、これがまあ驚いたことに月影花之丞は僕の両手にまだ生きていた。彼女の言動がするすると導かれるように出てくるのだ。あれよあれよと〆切前に脚本ができてしまった。というわけで、頭のネジがはずれた人達が闇雲に猛烈な勢いで舞台に向かって駆けていく、トンチキで楽しい芝居になるはずです。ご期待下さい。
Profile Nakashima Kazuki 1985年『炎のハイパーステップ』より座付き作家として劇団☆新感線に参加。座長いのうえひでのりとは高校演劇を通して知り合う。『銀河旋風児SUSANOH』『髑髏城の七人』『阿修羅城の瞳』など歴史や神話をモチーフに物語性を重視し、複雑に絡み合う伏線を多用した脚本は、疾走感とグルーヴ感あふれる演出とあいまって劇団の代表作となっている。また、『No.9 -不滅の戦慄-』(15・18・20)、『真田十勇士』(13・15)、『ジャンヌ・ダルク』(10・14)、『戯伝写楽』(09・12・18)、『レディ・ゾロ』『OINARI -浅草ギンコ物語-』(03)等の外部への書き下ろし作品も多数。演劇以外にも映画やテレビ『ふたがしら』(15)の脚本、コミック原作、テレビアニメ『天元突破 グレンラガン』(07)や『キルラキル』(13)、『BNA-ビー・エヌ・エ‐』(20)、『バック・アロウ』(21)の脚本・シリーズ構成や『仮面ライダーフォーゼ』(11)の脚本、劇場アニメ『クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』(14)、『ニンジャバットマン』(18)、『プロメア』(19)の脚本など活躍の場は広い。
【受賞歴】 第47回岸田國士戯曲賞(『アテルイ』)