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古田は劇団の“指針”的存在、みたいなところがあります。(いのうえ)
――いのうえさん、もしくは劇団にとっての古田さんの存在、立ち位置とは。

いのうえ

それはやっぱり、リトマス試験紙みたいなところかな。
――リトマス試験紙、ですか?

いのうえ

ネタや、話の運び方なんかも含めて全部そうなんですけど、それがイケてるのかイケてないのか、ちょっと迷った時は古田に聞いたりするので。IHIステージアラウンド東京での『髑髏城の七人』(2016~18年)の時の贋鉄斎のシーンとか。特にあれは、贋鉄斎の場面を3本も4本も作らなきゃいけなかったから。
――それは、古田さんが出ていないチームの時も意見を聞いていた、ということですか?

いのうえ

そうですよ。

古田

「成志はなんとかなるな。その次は、じゅんだけどどうする?」って。

いのうえ

それで「どうしよう?」って話してたら、なぜかイタリア系になっていったんだよ。

古田

「イタリア人っぽい、ざっくりとした服を着ていて、胸毛が生えてて……」って。
――あれは、古田さんのアイデアだったんですか?

いのうえ

そう(笑)。それ、面白いな!って話してた時は盛り上がってたはずなのに、最初に「ボーノ!」って書いたら、結局その先がなかなか進まなくって。それでなぜか、蕎麦屋になっていったというね(笑)。

古田

くくく。

いのうえ

と、いう感じで古田は劇団の“指針”的存在、みたいなところがあります。

池田

たいしたこと、やってないのに!(笑)

古田

「古田、ここのセリフで性的暴力なんて言葉が入ると、引くかな?」とかって言われることも、ありますよ。
――そうやって、お客さんが引くかどうかの基準も?

いのうえ

そう、このセリフはお客さん的に大丈夫かな、とか。大丈夫じゃないっすかねーとか、ここはちょっと危ないからやめときましょうとか。

古田

この組み合わせだと危険ですねとか、でもそこに高田(聖子)がいるのならアリですが、とか。

倉持

……なんだか、相場師みたいですね。どうだ、イケる?って(笑)。
――その判断は当たっているんですか。

いのうえ

まあ、ほぼほぼ。あまりハズレることはないと思う。

池田

というかそれ、相談する前にわかりそうなもんだけどな!(笑)

一同

(笑)。

いのうえ

わからなくなるんだよ、同じことを何回もやってると。

古田

そうそう。マヒしてくるんだよね。

いのうえ

最初はゲラゲラーって笑ってても、時間がたつとだんだん、これって本当に面白いのかな?面白くないのかな?ってわからなくなってくる。

古田

昔、20代の頃は、そういうことがよくあったんです。いのうえさんもオリジナルの脚本を書いていた頃の話ですけどね。
古田はとにかく“できる子”で有名だったんです、若い頃から。(池田)
――池田さんにとっての、古田さんの存在とは。そういう“指針”になるみたいなことは……。

池田

全然ないです、あるわけないでしょ!(笑)

古田

でも、成志さんが『大恋愛』やってた時に「東京来たら、一緒に芝居しようぜ」って言ってくれたんですよ。
――古田さんがまだ大阪に住んでいた頃ですか。

古田

そうそう。「古田を使って芝居がやりてえー」って、言っていましたよ。
――そう言われて、古田さんとしては嬉しかったんですね?

古田

 「やったー!」って思っていました。
――東京進出の足がかりになると?

古田

ううん、成志さんじゃ、足がかりにするには弱いけど(笑)。きっと、また遊んでくれるかなって思って。

池田

実際、芝居は一緒に作ったしね。『ヴァンプ・ショウ』(1992年、池田出演・演出、古田出演)みたいなのとか。
――その頃のことは覚えていますか?

池田

もちろん覚えていますよ。古田はとにかく“できる子”で有名だったんです、若い頃から。芝居はできるわ、ギャグはできるわ、ダンスはできるわ、殺陣はできるわで。「できる子が来た!」って、あちこちで言われていましたね。

古田

ハハハ。

池田

調子はいいし。でも面白かったよね、毎日のように飲み歩いていて。

古田

若かったからね。なんせ、23歳だったから。

池田

毎日、なんでこんなにずっと一緒にいるんだよっていうくらいだった。俺、いまだに覚えているけど朝5時まで飲んで、それから電車で帰るのに途中で寝ちゃって。ハッと起きて、ヤバイって反対側の電車に乗ったらさらに遠くまで行っちゃって。やっと家に着いたら朝9時半で、もうそろそろ稽古に出かける時間だったから、俺、一体何してたんだろうって……。

一同

(笑)。

古田

おいらはバンス(前借り)すればいいやと思ってて。その当時、プロデューサーの細川(展裕)さんがサードステージの社長だったから、飲みに行くたびに少しずつ借りてたんですよ。言えばすぐ貸してくれたから「おお、さすが売れてる劇団は違うぜー」って思ってたら、公演が終わったら借用書が用意されてて「おお?マイナス出てましたか!」って事態に(笑)。

いのうえ

ギャラの分、全部飲んじゃってたのか。

古田

そうそう。

池田

その頃は、そんな毎日でしたよ。だけど古田はもちろん年下なんですけど、昔から俺と一緒の年齢? いや上なのか?って態度なんですよね。僕といのうえさんが知っているような、昔のネタも本当によく知っているし。あたかも、同時期に見てたみたいなことを言うんですよ。

いのうえ

なんでそんなこと知ってんの?って思うこと、よくあるね。

池田

あれ?おかしいんじゃね?って。いまだに、年齢詐称を疑っていますよ(笑)。

いのうえ

なんでも知ってるから。

池田

俺より、年上なんじゃね?って思う。だから最初は先輩として可愛がっていたはずだったのに、30歳越えたあたりからはもう、逆にこっちが後輩扱いされてますからね。公の場では一応「成志さん」って呼んでいるけど、裏では「成志、おい、ほら」みたいな。

一同

(笑)

古田

これは昔から、なんですよ。なぜかつい、升(毅)さんにしても、10歳も違うのに「まっすん」って呼んでいたし。

池田

だけど生瀬(勝久)さんには、言わないよね。

古田

いや、昔は「槍ちゃん(以前、生瀬の芸名は槍魔栗三助だった)」って言ってたんだけど。

一同

ああ~。

池田

でも「生瀬」とは呼ばないじゃない?

古田

うん、呼ばない。それは途中から生瀬さんになったから。途中で名前変わる人って、めんどくさいよ。落語家さんとか、歌舞伎俳優とか。

いのうえ

そういえば俺も「幸四郎さん」って、いまだに言いにくいんだよなあ。なかなか、慣れなくて。 

池田

この際、いい機会だから古田も名前を変えてみたらどうよ?
――35周年記念に?(笑)

古田

じゃ、二代目早乙女太一になろうかな。

一同

(笑)
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